本研究は、東アジアの「地域主義」や「地域化」といった規範・言説が、国家だけではなく市民社会において如何に受容され、そうした地域主義秩序において国家と市民社会の関係がどのように位置付けられ得るのかを体系的に考察するものである。とくにトラック別分析を採用し、国家主体としてのトラックI、政府と民間主体の混成組織としてのトラックII、純然たる民間主体としてのトラックIIIを区別し、北東アジア・東南アジア・東アジアのそれぞれにおける地域主義と地域化の認識規範の変容を考察しながら、東アジア地域統合に通底する秩序「規範」を詳らかとした。前年度に研究成果を取りまとめて研究書を刊行した(『東アジアにおける国家と市民社会』柏書房。また本研究書の刊行にあたっては研究成果公開促進費の交付を受けた)こともあり、本年度はトラックIIIとの関係において地域主義規範と人権規範との考察に力を入れた。本年度においては研究が予想以上の進展し、これまでの調査結果をもとに国際会議等で中間成果の報告を行なった。
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