平成22年度の研究は、先行研究の分析と史料調査を中心に、1960年代米国の外交政策と国際経済政策との交錯について、全体像の理解に努めた。史料調査では、米国ケネディ政権の史料分析を優先課題とし、60年代当初の国際経済に関する認識分析を進めた。また、米国国務省および財務省で、国際経済を担当する部局の史料も確認し、史料の概要を理解して将来の本格的調査に向けた準備とした。本年度はさらに、ドイツの連邦首相官邸および主要政党の史料調査も行い、米国に対する西独(当時)政府の政策を理解することに努めた。 これらの史料調査および先行研究の分析から、当時の米国政府が自国の経済力が相対的に衰退しかねないことを認識し、これに基づいて国際経済政策を再検討していたことが明らかになった。とくにケネディ政権期、ディロン財務長官がこの問題に大きな関心を払っていたことは、ディロンが国務次官を務めたアイゼンハワー政権期との比較分析としても興味深い。 その一方でケネディ政権期には、国務省を中心に西側同盟の維持を重視する意見が根強く、国際経済政策が大きな影響を受けたことも確認された。これは本研究の仮説とも合致する知見であるが、政権内の力関係にどのような変化が生じていくのか、解明することが今後の課題となる。
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