本年度は、昨年度実施できなかった資料調査として、第一にハーバード大学におけるジョセフ・グルー文書・ウィリアム・キャッスル文書の調査を行い、第二にケンブリッジ大学におけるR.A.バトラー文書内の各国大使との面談記録及び関係書簡等との比較調査を行った。また、本研究実施中に新たな調査対象となった加納久朗関係文書(千葉県)の調査と重ね合わせ、一昨年来の資料調査を終了することを目的とした。また、当初の計画にあった他の諸資料は、予算等の関係から他大学図書館所蔵および国会図書館蒐集のマイクロフィルムなどによって代替することとした。 拙稿「外務省と知識人ー「ジャポニカス」工作と「三年会」(下)」(『東洋研究』187号、大東文化大学東洋研究所、2013年1月)、「第二次世界大戦期における日本の国際情勢認識と対外構想~戦争のなかの戦後」(井上寿一編『日本の外交』第一巻 戦前編、岩波書店、2013年)は、以上の調査を踏まえ、戦時中の対ソ戦略・対枢軸国戦略およびその背景となる国際情勢認識を戦後構想との関係で考察したものである。また、「国際関係論と外交史のあいだ~戦間期日本外交の歴史像と分析枠組をめぐる史学史と理論~」『大東法学』22巻1/2合併号、2013年3月は、この間、問題意識として明確になった戦間期の日本外交史像を史学史的に考察したものである。また今年度刊行予定である「開戦前夜の駐英大使館1939-1941 ~重光葵・吉田茂・加納久朗の避戦工作~」(論文集の一部として刊行予定)、『大英帝国の親日派たち~イギリス外交と「ジョンブルアソシエーツ」の軌跡~(仮)』(中央公論新社より2013年度中に刊行予定。アントニーベスト著。筆者は翻訳と解説を担当)は、直接にイギリス及びアメリカでの調査を踏まえたものとなろう。
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