民族主義と地域主義の相互作用は地域統合論の重要なテーマの一つである。特に、北東と東南アジアでは、国民国家の政治的正当性を高めることができる民族主義は東アジアの地域協力に大きな影響を与えてきた。本研究は地域協力と統合プロセスにおける民族主義の政治化に焦点を絞り、ヨーロッパと東アジアの経験を比較することを通じて、理論面と実証面から比較地域統合論の構築に貢献することを目的としている。 今年度の研究は、研究資料の収集と分析、フィールドワークの遂行、研究成果の発表に集中した。具体的には、(1)中国の上海図書館やタイのタマサート大学、チュラロンコーン大学などの研究機構において、東アジアにおける民族主義と地域主義に関する資料を収集し、地域協力のプロセスの中で民族主義の影響に関する諸課題を検討した。(2)東アジアにおける民族主義と地域主義の相互作用について、タイにおいてフィールドワーク・インタビューを実施した。(3)一部の研究成果は、国際学会で報告したとともに、各国の研究者との交流を深めることができた。 本年度の成果として、アメリカのサンフランシスコに開催された国際研究学会(International Studies Association)の2013年度研究大会で研究発表を行った。5月にアルゼンチンのブエノスアイレス、8月にオーストラリアのパース、1月に東京で開催されたGR:EENワークショップでも最新の研究を発表した。そのほか、日本公益学会の2012年度研究大会で「東アジアにおける民族主義と地域主義」をテーマとする研究報告を行った。
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