研究課題/領域番号 |
22730150
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
松村 史紀 宇都宮大学, 国際学部, 講師 (80409573)
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キーワード | 中ソ関係 / 中ソ同盟 / 東アジア国際政治史 / 冷戦 / 東アジア冷戦 / 中ソ友好同盟相互援助条約 / 旧敵国 |
研究概要 |
【目的】本研究は二つの中ソ同盟の比較を最終目的にしているが、H23年度は、第二中ソ同盟(1950年2月に締結)の成立過程と特徴を史的考察することを目標に研究を進めた。 【内容】まず、第一中ソ同盟から第二中ソ同盟への移行期における中ソ関係の史的考察(具体的には、ミコヤンの秘密訪中)を進めた。次に、第二中ソ同盟の成立過程を史的実証した。特に、この同盟が第二次世界大戦後の「戦後」平和構想(戦勝国による旧敵国・日本の台頭阻止)と「冷戦」(米国を仮想敵にする同盟)という二つの要素を結び付けて成立したことを明らかにした。 【意義】冷戦史研究では、第二中ソ同盟が「冷戦」を闘う同盟としてのみ理解されてきた。しかし、本研究ではこの同盟の仮想敵が「戦後」構想の旧敵国(日本)であると同時に、この日本と結託する「冷戦」の敵(米国)であったことに注目し、第一中ソ同盟の核心部分(戦勝国による旧敵国の抑止)が第二中ソ同盟にも継承されたということを論じた。 【重要性】(1)独創的な議論としては、第二中ソ同盟が「冷戦」を闘う共同防衛体制ではなく、東アジア国際政治の現状維持(米国の対中軍事不介入)をはかるための工夫を凝らした同盟であったと再評価したことである。それは仮想敵の設定、ソ連軍の在華プレゼンス後退などに現れた。(2)新資料(特に旧ソ連公文書、中華人民共和国外交部档案)を総合的に利用した史的実証を行った。 【研究活動の内容】(1)海外への資料調査(中華人民共和国外交部、北京大学)、(2)学会発表二回(北東アジア学会、アジア政経学会)と研究会発表(戦後「満洲」史研究会)、(3)共著発表(『東アジア地域の立体像と中国』『東アジアにおける二つの「戦後」』)と学術論文の投稿(2012年3月、アジア政経学会『アジア研究』に投稿)、(4)『二〇世紀満洲歴史事典』(吉川弘文館、次年度出版予定)の編集・執筆作業(本研究の研究成果一部を含む)を中心に研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、第一中ソ同盟の論稿、ミコヤン秘密訪中に関する論稿を発表できた。また、第二中ソ同盟の考察については、二回の学会発表を経て、学術論文を執筆し、学会誌に投稿済みである。なお、第二中ソ同盟に関する論稿については、今年度後半にいたって旧ソ連公文書の新資料の存在を知ったため、その資料のアクセスに苦労し、学術論文の完成が2012年3月にずれこんだが、年度内に投稿することができた。
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今後の研究の推進方策 |
現時点では、当初の計画通りに進める予定である。H22年度には第一中ソ同盟、H23年度には第二中ソ同盟をそれぞれ史的実証したため、最終年度のH24年度はこの両者を比較研究する段階に入ることができると考える。 そのために、(1)同盟理論に関する論点整理、(2)第一、第二中ソ同盟を比較するための論点整理を進めながら、これまで渉猟できなかった資料についても適宜調査を進める予定である。 特に、仮想敵の設定方法についての比較、ソ連の在華利権に関する比較、共同防衛体制の比較、他の同盟の可能性などについて考察を進める予定である。
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