【目的】本年度は、H22年度に進めた第一中ソ同盟(1945年8月成立)に関する研究、H23年度に進めた第二中ソ同盟(1950年2月成立)に関する研究、この両研究成果を基礎にしながら両同盟を同盟理論から比較考察することを目的とした。 【内容】まず同盟理論の成果を手掛かりに、仮想敵に対する共同防衛の態勢として、攻守同盟と集団安全保障(地域的取極を含む)を取り上げ、比較検討した。次に、その整理を基に、二つの中ソ同盟を比較考察した。その結果、第一中ソ同盟が国連の集団安全保障のなかの地域的取極に位置づけられるのに対し、第二中ソ同盟は攻守同盟と地域的取極の間に位置するものだという結論が得られた。 【意義】先行研究には二つ問題があった。①同盟理論からの分析がほぼ皆無である。②両同盟を比較考察した研究は少なく、条約内の利権配分が平等か不平等かだけが問題にされてきた。これに対して、本研究では同盟の本質的機能(仮想敵に対する共同防衛態勢)から両同盟を比較考察できた。 【重要性】①歴史研究と理論分析とを連携させた成果は少ないが、本研究はその連携を試みた。②中華民国史と中華人民共和国史の両分野には事実上研究の分業体制が成り立っているため、これまで二つの中ソ同盟を比較考察する研究は極めて少なかった。③冷戦史研究においては、第二中ソ同盟の分析に偏重してきたが、本研究では第二次世界大戦後の戦後秩序を体現した第一中ソ同盟を分析の視野に含めた。その結果、第一中ソ同盟から第二中ソ同盟への変容過程を分析することができた。 【研究活動の内容】①海外の学会等で二回研究報告に臨んだ。②日本国際政治学会分科会で研究報告をした。③一般読者向けの共編著を刊行(『二〇世紀満洲歴史事典』)し、二つの中ソ同盟を含む関連項目の解説を行った。④学術論文を発表した(第二中ソ同盟の成立過程に関する史的研究1点、二つの中ソ同盟の比較考察を2点)。
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