プロジェクト最終年度となる本年度は、本研究の基本史料となる中国外交部档案の既存公開分の調査・収集、ならびにその電子化、データベース化を進めると同時に、研究成果をまとめるため、複数の論文を執筆・活字化した。 まず史料調査だが、残念ながら、本年度も中国外交部の新規档案公開(1965年~1970年分)はなかった。それどころか、尖閣国有化による日中関係の悪化、ならびに「尖閣」という表現が明記された外交部档案の「発覚」をめぐる日中衝突などに伴い、中国外交部档案館における史料調査については、一部閲覧の制限がかけられているような状況があり、これについてはしばらく静観の姿勢を取らざるを得ない。 もっとも、すでに調査・収集済みの分(約1700件中800件程度)については、その電子化・データベース化が8割程度まで進行しており、今後、本研究をさらに発展させていくうえで極めて重要な基礎となると考えられる。なお、研究代表者は、新たに平成25年度より科研費「若手研究(A)」(平成25年度~平成28年度)に採択内定しており、本研究を基礎としながら、引き続き1960年代中国の対日外交研究を深化させていくことになる。 なお、過去3年に及ぶ本研究最終年度の成果としては、日中国交正常化40周年を記念して編纂・刊行された『日中関係史 1972-2012』(東京大学出版会、2012年10月)全3巻の第1巻(高原明生・服部龍二編『政治編』)第1章「日中国交正常化前史 1945-1971」(5-39頁)として発表、「72年体制」出現に至る日中両国の外交政策の交錯を最新の史料・研究に基づき描出した。また、戦後処理に関しては、専論として「中華人民共和国の対日『戦犯』処理―裁かれた『帝国』」(増田弘編著『大日本帝国の崩壊と引揚・復員』慶應義塾大学出版会、2012年)を発表した。
|