本研究は、自由化の波に取り巻かれた東南アジアの自動車産業の発展の課題と可能性を自動車部品産業及び部品貿易の視点から検証することを目的とした。とりわけ、アセアンの最大の自動車生産国であるタイに注目して、自動車産業の振興政策と自動車部品産業の集積の現状と産業高度化の分析を行った。90年代以降、タイ政府はインフラ整備、人材育成、中小企業支援・経営改善を促進することで、自由貿易政策のもと外資系自動車関連企業の誘致及び地場企業の育成を行い、自動車関連産業のクラスター形成を積極的に推進してきた。その結果、タイはとりわけピックアップ・トラック市場でアジアのみならずグローバルなレベルで重要な地位を確立しつつある。こうした背景において、同国の自動車産業は、規模の経済性をフルに活用することでさらなる部品産業の集積を進め、東南アジア域内の自動車産業の再編の原動力となっている。本年度の研究では、FTA及びエコカー・プロジェクトなどの新しい政府主導の政策が、タイ自動車部品産業において、どのような影響を及ぼしているか検証した。
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