Gul and Pesendorfer (2001)の先駆的論文以来、動学的非整合性などの異時点間選択の問題が「誘惑と自制モデル」を用いて説明されるようになってきた。しかし、このモデルの前提となる機会集合上の選好は複数の効用関数表現を持つことが知られており、モデルを異時点間選択に応用する上で問題を含むことが指摘されていた。そこで、従来のモデルを選択対応と呼ばれるデータを含むように拡張することで、この問題点を解決できることを示し、さらにこの拡張モデルによって、既存研究では説明できなかった誘惑と自制の下での自然な選択行動を説明することが目的である。より具体的には、以下の二つを考える。(a)自制モデルに選択対応を含めた拡張モデルの構築、(b)無関係な選択肢からの独立性:誘惑と自制の行動では、通常の選択理論と異なり、最終的に選ばれなかった選択肢(無関係な選択肢)がその選択に影響を与える可能性がある。22年度は、Boston UniversityのJawwad Noor氏と共に、上記(a)(b)を考慮したモデルを提示し、その公理的基礎を与えるという作業を行った。この研究の意義は、多くの結果を説明できる統一的なモデルを提供したという理論的貢献と、モデルの公理的基礎を与えたことにより、モデルの実験や実証可能性を保証し、理論のさらなる発展の基礎となるという側面にある。現在までの研究成果はworking paperの形にまとめられている。また国内外の研究会や学会などで関連研究の報告を行い、研究成果のアピールや、今後の研究に役立つ貴重なコメントを得ることができた。
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