研究概要 |
オークションがその代表だが、非分割財を金銭移転とともに配分する問題のメカニズムデザイン研究において、選好に準線形の仮定を置くことは非常に多い。メカニズムの実用可能性を促進するためには、この仮定を落としたモデルで問題を考えることが重要であり、特にそれを本年度は実行した。その主要成果であるSakai,[T(2012)]"An equity characterization of second price auctions when prefbrences may not be quasilinear"では、準線形でない選好を扱えるオークションルールの設計問題を研究した。特に新しい点は、公平性の概念を満たす設計を考察したことである。メカニズムデザインでは効率性の方が公平性よりも扱われることが多いが、取引におけるフェアネスを考えれば、公平性の意義は効率性に劣るものではない。この論文では、新しい水平的公平性の条件を定義し、その条件・耐戦略性・弱い個人合理性条件を満たすオークションルールが、第二価格オークションの拡張版であると特徴付けた。この拡張版ルールは効率性を満たすので、公平性の条件を用いて効率的なオークションルールの特徴付けを行ったことになる。この定理はオークション環境を超えて、一般の環境における公平性と効率性の間に存在する論理関係を示唆しており、新たな研究の方向を切り開くものである。現在はフィールド代表誌であるReview of Economic Designからポジティブな内容の改訂要求が来ており、改訂作業中にある。また、本年度は関連研究で、分割可能財のケースで実用可能なメカニズムデザインについて論じたSakai,T.and Wakayama,T.(2012)がTheory and Decision誌に公刊された。
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