研究概要 |
遂行理論では,設計したメカニズムが複数個の均衡を持つとしても,それらの均衡アウトカムはすべて必ず社会目標に一致するので,複数個の均衡を持つことは理論的には問題とされない.しかしながら,複数均衡を持つメカニズムを現実の制度に適用するとなると,人々がどの均衡の達成を目指そうとするのかという均衡調整問題が発生する.特に,最近現実に使われつつある直接表明メカニズムはシンプルなだけに複数均衡を持ちやすく,均衡調整問題を解決することは重要な課題となっている.本研究では,完備情報下での直接表明メカニズムにおける均衡調整問題の解決を目指し,直接表明メカニズムが複数個の均衡を持つときに,その一つに正直均衡を含むときには正直均衡がフォーカル・ポイントになるかどうかを被験者を使った実験で検証する. 本研究では,正直均衡がフォーカル・ポイントになるかどうかを検証するために,複数均衡を持つときに正直均衡を含むメカニズムと全く含まないメカニズムを設計し,前者の方が高い均衡達成率を示すかどうかを統計的に検定する手法をとる.本年度は,比較するこれら二つのメカニズムを,Mizukami,H.,T.Nihonsugi,and T.Wakayama:"Is the Truth-Telling Equilibrium Salient?:An Experiment on Direct Nash Implementation"論文(現在執筆中)にあるメカニズムを参考に設計を行った。
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