本研究では複数の個人が集団を形成し、互いにコミュニケーションをとりながら到達した意思決定がどのような特徴を持つかを、実験を通じて経済学的に解明することを目的としており、特に「集団形成による正の相乗効果創出の原因解明」「集団行動の経験の持続性の検証」に焦点を絞り検証を行う。「集団行動の経験の持続性の検証」に関しては、現在も実験デザインの精緻化を行っており、来年度以降に実験を行う予定である。本年度は「集団形成による正の相乗効果創出の原因解明」に関連した実験を行った。Okano(2011)(現在、Games and Economic Behaviorから改訂要求が来ている)ではO'Neill(1987)で使われているゲームを用いて「集団の行動は個人の行動よりもよりナッシュ均衡と整合的である」という実験結果を得ている。これを受けて、本年度ではRapoport and Boebel(1992)で用いられているゲームを使って同様の実験を行った。このゲームは、O'Neillゲームより複雑なゲームであり、Rapoport and Boebel(1992)の実験結果でも、個人の行動はナッシュ均衡から大きく外れているという結果になっている。このゲームを集団がプレーした時に、ナッシュ均衡と整合的な行動がとれるのかを検証するのが本実験の目的である。この実験を通して、どのようなゲーム(経済的状況)において、集団と個人との間で行動が異なってくるのか、集団の行動がナッシュ均衡と整合的になる経済的状況にはどのような特徴があるのかを明らかにすることができる。現在はこの実験で得られたデータを分析中である。
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