研究概要 |
本研究の目的は経済成長が労働市場、とりわけ労働力フローに与える影響を理論・実証の両面から分析することである。そこで、米国、日本、欧州諸国における経済成長率、失業率、離職率、就業率の時系列データを使用し、経済成長率と失業変動の背後にある労働力フローの関係を明らかにした。Miyamoto and Takahashi(2011)では、米国における労働力フローの時系列データを使用し、労働力生産性の成長率の上昇は、就職率の上昇と離職率の低下を通じて、失業率を低下させることを示した。また、日本の労働力フローに関するファクトの整理をLin and Miyamoto(2011)で行った。さらに、経済成長率が労働市場にどのような影響を与えるかについては、近年、マクロ経済学および労働経済学において労働市場全体を分析する際の標準的な枠組みを提供しているサーチ・マッチングモデルを用いて理論、数量分析を行った。これらの研究成果はMiyamoto(2010, Japan and the World Economy)およびMiyamoto and Takahashi(2011, Journal of Monetary Economics)で発表している。特に、Miyamoto and Takahashi(2011)では、まず米国時系列データを使用し、労働生産性の成長が失業プールへの流入を低下させる一方、流出を上昇させることで失業率を低下させることを示した。この結果は既存のサーチ・マッチング理論の枠組みでは説明が困難であるが、本研究では、米国労働市場の特徴のひとつであるJob-to-job flowに注目し、on-the-job searchを導入したサーチモデルを考えることで、上述の観察される事実を理論、数量的に説明することに成功した。また、Miyamoto(2011, B.E.Journal of Macroeconomics)では、米国における景気循環の労働市場の動きをサーチ理論を用いて理論、数量的に分析を行った。
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