研究概要 |
本年度は,「自発的寄付メカニズム」と「パレート・メカニズム」における参加確率を比較する経済実験の準備を行った.具体的には,プレイヤーが3国存在する場合の実験方法をデザインした.実験インストラクションやプログラムの作成はほぼ完成し,次年度に実験を実施する準備は整った.また本年度は,実験の準備だけでなく,理論的成果にも進展があった.プレイヤーが3国存在し,どの国も同一のコブ=ダグラス型効用関数を持つ場合,これまでシミュレーション分析によって,「自発的寄付メカニズム」の方が「パレート・メカニズム」よりも混合戦略均衡における参加確率が高くなる状況が存在することはわかっていた.今年度の研究では,それが広範な状況で成り立つことを理論的にきちんと示すことができた.この結果が一般的な状況で成り立つかどうかはまだ検討中であるものの,ひとまず実験で検証する理論部分の証明を完了できたことは意義が大きいと考えられる.そして,シミュレーション分析により,参加確率や期待効用水準だけでなく,公共財の供給水準についても,「自発的寄付メカニズム」の方が「パレート・メカニズム」よりも高い場合があることがわかった.さらに本年度は,本研究課題と密接に関連するテーマである頑健なメカニズムの設計問題に関する研究について,藤中裕二氏(東京工業大学)と共同執筆した論文がEconomic Theory誌に公刊され,坂井豊貴氏(慶応義塾大学)と共同執筆した論文がTheory and Decision誌に公刊された.
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