研究概要 |
社会的選択の際に虚偽の選好を表明することによって社会的選択結果を自分にとってより望ましいものにできる場合があることはよく知られている.このように社会的選択が「操作」されることによって歪められてしまうことは大きな問題である.平成22年度は,社会的選択規則の操作不可能性に関する新たな概念を提示し,それに関連する理論研究に従事した.具体的には「耐隣接操作性」という概念を提示し,その概念を導入することについて説得力のある根拠を与えた.また,「耐隣接操作性」と「耐戦略性」の同値性のための十分条件として,平成21年度に発表したディスカッションペーパーよりも弱い条件を発見した.さらに「耐隣接操作性」と「耐戦略性」の同値性のための必要条件も発見した,これらの結果は,個人の持ち得る選好として線形順序を想定しているが,弱順序を想定した場合の理論分析も行った.そこでは,線形順序を想定した場合に得られる結果が弱順序を想定した場合には得られないことを示した.そこで,「耐隣接操作性」よりも一般的な条件(D(k)-proofness)を導入し,弱順序全体の集合上でD(k)-proofnessが「耐戦略性」と同値になるためのkに関する必要十分条件を発見した.
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