研究課題/領域番号 |
22730173
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
若森 みどり 首都大学東京, 社会科学研究科, 准教授 (20347264)
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キーワード | カール・ポランニー / 市場社会 / 民主主義 / 人間の自由 / 世界経済危機 / ファシズム / 産業文明 / 経済社会学 |
研究概要 |
本研究の目的は、カール・ポランニーの主著『大転換』(初版、1944年)の知的・思想的な源泉を明らかにすることである。本研究では、カール・ポランニー政治経済研究所が保管する未公刊資料が公開されて以降の、アーカイブ研究の進展に象徴される国際的なポランニー研究の成果を吸収したうえで、『大転換』以前のポランニーの社会哲学や『大転換』以降の経済制度分析や経済社会学の展開、そして未完の構想や企画の関連性をも考察し、ポランニー思想の全体像を明らかにするよう努める。 平成23年度は、1920年から最晩年に至るカール・ポランニーの思索の軌跡を再構成した、単著『カール・ポランニー:市場社会・民主主義・人間の自由』(NTT出版、2011年11,月)を公刊した(ポランニーの研究動向の最新段階を踏まえた序章、激動の時代を生きた社会科学者ポランニーの生涯に言及した第1章、倫理的社会主義・社会的自由・透明性の論点を明らかにした第2章、世界経済危機とファシズムの台頭という時代のなかで市場社会の制度主義的な変容を考察した1930年代のポランニー像を描いた第3章、第4章『大転換』の世界、『大転換』後のポランニーの経済社会学(第5章)、原子力の平和的利用の時代を批判的に考察した最晩年の社会哲学(第6章産業文明と人間存在)、終章から構成)。そして、カール・ポランニー政治経済学研究所の助力を得ながら、日本での新しいポランニー論文集の刊行に向けての編集と翻訳作業に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1920年代、1930年代、1940年代、1950年代、1960年代のポランニーの遺した未公刊の重要な論考についてこれまで解釈してきた諸論点を整理してまとめ、単著『カール・ポランニー』を著した。これによって、『大転換』の知的・思想的起源、および『大転換』後に展開するポランニーの社会哲学と制度主義的思考の源流について、ある程度明らかにできた、と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、近年イタリア、ドイツ、フランスのカール・ポランニー研究者によって飛躍的に進展した、ポランニー・アーカイブ研究の国際的な水準を日本に反映させてゆく、という目的を持っている。今後、引き続き、1920年代、1930年代、1940年代、1950年代のカール・ポランニーの重要論考を編集した、翻訳書の刊行作業に向けて尽力する。また、カール・ポランニーの理論的再構成や現代的な意義の探求といった研究課題も、今後、必要になる。
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