研究課題/領域番号 |
22730174
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
壽里 竜 関西大学, 経済学部, 准教授 (20368195)
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キーワード | ヒューム / スコットランド啓蒙 / 啓蒙思想 / 懐疑主義 / エピキュリアニズム / 文明社会 / 文明論 / 想像力 |
研究概要 |
今年度は、スコットランドのエジンバラで2011年7月に開催された第37回The Annual Hume Conferenceにおいて、"The Empire of Imagination: The Association of Ideas in Hume's Social Philosophy"というタイトルで報告を行った。本報告は、ヒュームの処女作にして代表作である『人間本性論』第一編で展開された観念連合理論が第三編の道徳論においても、正義の諸規則形成に重要な役割を果たしていること、またその後の「情念論」においても同様の主張が繰り返されていることから、ヒュームの観念連合理論への関心はけっして衰えていないことを論じるものであった。なお、本学会はヒューム生誕三百周年を記念する年に、ヒュームゆかりのエジンバラで開催され、従来のHume Conference以上に数多くの参加者・報告者を集めて開催された。本大会における日本人の報告者は私を含め2名であった。 また、岩波書店の『思想』の「デイヴィッド・ヒューム生誕三百年」記念号に、ヒュームの草稿(いわゆる「騎士道論」)の翻訳と解題を掲載した。本草稿は、近代社会に特徴的な名誉観念の起源を騎士道の発達に即して論じたものであり、その執筆時期の推定も含め、近年、研究者の間でも関心が集まっている。本草稿の翻訳も、日本語によるその内容の詳細な紹介も本邦初である。さらに、学術雑誌Hume Studiesにグラスゴー大学名誉教授のクリストファー・J・ベリーによるDavid Humeの書評を掲載した。書評とは言え、評者自身によるヒューム研究の新たな展開の方向性を呈示したものとして、研究成果として掲載した。具体的には、19世紀の急進主義者におけるヒュームの影響、ハイエク的自制的秩序の枠組みの再検討を指摘している。なお、学術雑誌Journal of the History of Ideasにヒュームの教会論に関する論文がアクセプトされたが、2012年4月末に出版予定であるため、本研究実績報告には記載しなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、公表された成果はそれほど多いとは言えないが、アクセプト済みの査読つき論文もあり、さらに2012年度中にはこれまでの研究を踏まえた研究成果の発表を構想している。幸い、2012年4月より半年間の研修期間が得られたため、研究計画の遂行を加速させられる状態にあると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は主として、これまでに発表した研究成果を中心に、一冊の著作にまとめる作業を行う。すでに一冊の本として十分な量の蓄積があるため、今年度前半中に出版社にプロポーザルを提出する。出版社へのアプローチの仕方等については、すでに海外の研究者から情報収集を行っている。なお、万が一、英語圏の出版社で出版が不可能となった場合は、個別論文として投稿・発表していく可能性もある。
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