研究課題/領域番号 |
22730174
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
壽里 竜 関西大学, 経済学部, 准教授 (20368195)
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研究期間 (年度) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | スコットランド啓蒙 / 啓蒙思想 / ヒューム / 懐疑主義 / 文明 / 宗教批判 |
研究概要 |
今年度は、4月から9月までの国内研修期間を活用し、当該研究課題の集大成となる著作の執筆に集中した。原稿はすでに完成し、現在出版社と交渉中であるが、出版の可否については確定していない。 今年度の研究成果としては、第一に、4月にアメリカのサウス・カロライナ大学で開催されたAnnual Meeting of the Eighteenth Century Scottish Studies SocietyにおいてHume as a Friend of Liberty: the Reception of his Perfect Commonwealthとのタイトルで学会報告を行った。この報告は、ヒュームによる「完全な共和国に関する一案」という論説が18世紀末から19世紀前半の急進主義者たちにどのように継承されていったかを文献学的に追跡したものである。 第二に、公表された研究成果として、Journal of the History of IdeasにTaming 'the Tyranny of Priests': Hume's Advocacy of Religious Establishmentsを発表した。これは、本研究課題の一つであるヒュームの宗教(教会・聖職者)批判について考察したものであり、従来、ヒュームの保守性ととらえられてきた彼の主著『イングランド史』における国教制度支持が、高度な言語戦略に基づく批判的言説であったことを明らかにしたものである。 以上の研究実績から明らかなように、今年度は原稿の執筆に多くの時間を割いたため科研費はもっぱら英文原稿の校閲に支出することになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請時には、最終(平成25)年度になってからこれまでの研究成果を踏まえて著作を執筆する予定であったが、幸いにも今(平成24)年度に国内研修の機会に恵まれたため、研究成果の発表を含め、集中して原稿執筆にあたることができた。その上、今年度中に原稿を完成させることができ、さらに出版社との交渉に入ることができた(ただし、出版の確約はまだ得られていない)。 また、今年度はJournal of the History of Ideasに本研究課題の成果を発表することができた。この分野ではトップジャーナルの部類に属し、日本人による論文発表もごく限られているこの雑誌に本研究課題の成果の一部を発表できたことは、本研究の重要性に対する国際的評価の一端を示すものであろう。 この雑誌に発表した論文は、冒頭に述べた原稿の一部をなしている。現在交渉中の出版社との間で原稿を査読してもらえる段階まで進むことができた一つの要因として、本年度の研究成果が大きく影響していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
先に述べたように、本研究課題の集大成ともいえる原稿を、現在交渉中の出版社にすでに提出しており、外部査読者によるレポートを待っている状態である。したがって、研究成果が著作として公表できるかどうかは出版社の判断による。仮に出版されることになれば、今後は原稿の改訂に集中することになる。また、現在交渉中の出版社では出版できないとしても、すでに原稿自体が完成しているため、必要な改訂を施した後、すぐさま他の出版社との交渉に移る予定である。 具体的な改訂作業としては、いまだオンライン化されていない18世紀末~19世紀前半の雑誌記事等におけるヒュームへの言及について調査するため、大英図書館およびケンブリッジ大学図書館等で資料調査をする必要がある。また、以前にオックスフォード大学における在外研究の際、受け入れ教員であったジョン・ロバートソン氏が現在ケンブリッジ大学にいるため、原稿の改訂作業にあたっていくつかの助言を仰ぐことにしている。 いずれにせよ、最終年度にあたる平成25年度中の研究成果の公表を目指し、鋭意努力する所存である。
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