平成22年度は、修正Box-Cox変数変換を伴う定常時系列モデルについて、モデルのパラメータの数値推定法を改良して、推定量の漸近共分散行列の有限標本での正確な評価法を確立することを目指した。従来の推定法は、Hannan-Rissanen(1982)の3段階の推定法に基づいているが、モデルに定数項やトレンド項がある場合には、この方法を直接適用できないので、3段階目では、尤度関数の1階微分の評価についてはHannan-Rissanen(1982)の方法で評価し、それを準ニュートン法におけるBFGS公式に代入する形で最適化を進めている。しかし、この方法では尤度の改良があまり進まないという問題があり、その原因としては、現在のアルゴリズムが時間領域で作成されていることと、BFGS公式を利用して計算を進めているところにあると予想している。そこで、推定法では時間領域による推定より有効とされる、周波数領域における推定のアルゴリズムをつくることで改良を目指した。さらに、モデルにおける検定法についても、引き続き正確性を求めて再検討および改良を進めた。 以上の作業を完成させて数値推定法を確立するためには、シミュレーションによる数値評価を実行する必要がある。本研究では、これまで研究で利用してきた東北大学情報シナジーセンターのスーパーコンピュータSX-9を用いて以上のことを実行する予定であったが、本年度は、東北関東大震災の影響により、東北大学サイバーサイエンスセンターの大型計算機システムの運用が3月に停止してしまった影響により、これらの作業を完成するまでには至らなかった。平成23年度については、まず上記の作業をできるだけ進めることを目指したい。
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