最終年度では、これまでの研究で提案した計算手順を反映した、Fortranの計算プログラムの改良を実施した。従前のプログラムでは、1変数について2000以上のデータの解析を東北大学のスーパーコンピュータSX-9試みた場合、メモリの不足で、計算ができないという問題が生じたが、以下に記載した改良を実施して、何年にもわたる日時データのような大きなデータについても分析可能になった。主な改良点であるが、配列の大きさを定数で宣言できるよう配列部分を全て書き換え、メモリの節約を目的に、割付配列を積極的に利用した。さらに、interface、モジュールを積極的に利用することで、プログラムの保守性を高めた。結果、4変数で期間が200程度の多変量データであれば、従前のプログラムと比較して、計算時間を半分に縮めることに成功した。このことは、モデルの変数の共分散行列を評価する際に大きく寄与することにつながる可能性がある。実験的に、1996年から2005年のトヨタの株価の日時データの収益率に、Box-Cox変数変換を伴うARMAモデルの当てはめを試みた。計算時間はSX-9で20秒程度で、Hannan法の2段階目に相当する段階の推定結果は、変換のパラメータλは、極めて1に近いところで推定された(事実上変換を施さないことを示唆する)。残差の正規性の検定では、正規性を棄却した。但しλの推定値は、推定のための初期値からほとんど動かず、この原因の究明が必要である。さらに、長期で大きく変動することのある株価のデータについて、変換を施して推定した際に起こる現象について、慎重な分析が必要である。これらの結果は、今後速やかに論文等で報告したい。本研究は、提案したモデルを非定常プロセスの系列にも適用可能なものにすることも目的であったが、定常プロセスにおいても新しい課題が見えてきたので、その部分も併せて研究を進めたい。
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