研究概要 |
本年度は大きく分けて2つの研究を行った。1つは動学的パネルモデルにおける初期値の影響の考察であり、もう1つはパネルデータを用いたベクトル自己回帰(VAR)モデルの推定量の改善である。1つ目のトピックでは、Hahn, Hausman and Kuersteiner(2007, Journal of Econometrics)はパネルデータの従属性が強いときのGMM推定量の漸近的特性を考察するために、local to unityアプローチという手法を用いてGMM推定量の漸近的特性を導出し、一般的にGMM推定量は一致性が無いことを示している。しかしながら、Hayakawa(2009,Journal of Econometrics)のシミュレーション結果は、データの従属性が強い場合でも初期値の仮定によってはGMM推定量のバイアスがほとんどなくなることを示しており、Hahn, Hausman and Kuersteiner(2007)の結果と矛盾する。そこで、本研究ではnear mean-stationarityという概念を導入し、初期値がnear mean-stationarityであれば一致性を持たないが、near mean-stationarityを満たさないときは、従属性が強い場合でもGMM推定量は一致性を持つことを示した。 2つ目のトピックではHayakawa(2009,Econometric Theory)によって提案された操作変数推定量の拡張を行った。Hayakawa(2009)ではiid誤差項を持つパネルAR(p)を考察していたが、それをクロスセクション不均一分散を持つパネルVARモデルに拡張し、Hayakawa(2009)と同じような結果が得られることを示した。
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