研究概要 |
本年度は大きく分けて3つの研究を行った。1つ目は昨年度から行っている動学的パネルモデルにおける初期値の影響の考察である。昨年度はデータの従属性が強いときの1階階差GMM推定量の漸近的性質が初期値の仮定によって大きく変わることを理論的に示し、モンテカルロ実験でその振る舞いを調べたが、今年度はそのような理論的結果が実際のデータを用いた分析でも起こることを実証分析を通じて確認した。 2つ目は動学的パネルモデルの最尤推定量の考察である。Hsiao,Pesaran and Tahmiscioglu(2002,Journal of Econometrics)はデータがi.i.d,であることを仮定して変換尤度推定量を提案しているが、この仮定をクロスセクションの不均一分散を許すように緩めた。理論的分析からは変換尤度推定量はクロスセクションの不均一分散がある場合でも一致性があることが分かり、また不均一分散に robustな標準誤差も提案した。モンテカルロ実験で変換尤度推定量と種々のGMM推定量を比較したところ、ほとんど全てのケースで変換尤度推定量の方がGMM推定量よりもパフォーマンスがいいことが分かった。 3つ目は誤差にinteractive fixed effectsがある場合のダイナミックパネルデータモデルの考察である。誤差項にinteractive fixed effectsがある場合、通常のGMM推定量は一致性を失ってしまうため、interactive fixed effectsに適切に処理する方法である。本研究ではprojectionmethodを用いてinteractivefixedeffectsと説明変数の相関を取り除いたモデルにG剛を適用する方法を提案した。
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