昨年度に引き続いて、固定効果付分位点回帰モデルに対する推定量の漸近理論の整備に従事した。本研究課題採択後に、 (1)標準的な分位点回帰推定量の漸近理論に関する論文(Wisconsin大学Milwaukee校Antonio Galvao教授、City University London教授Gabriel Montes-Rojas教授との共著)、および(2)評価関数を滑らかに近似した平滑化分位点回帰推定量の漸近理論に関する論文(Antonio Galvao教授との共著)、の2本の論文を完成させ、査読付き学術誌に投稿し、(1)の論文は昨年度の段階でJournal of Econometricsに受理され、本年度9月に正式に発行された。(2)の論文も同誌に投稿中で、本年度はレフェリーの要求に従い改訂を継続している。加えて、分位点回帰モデルに限らず、固定効果付パネルデータモデルに対するクロスセクション・ブートストラップに関する理論的整備を進めた。また、ある種のパネル分位点回帰モデルといえる、関数線形分位点回帰における主成分ベースの推定量の漸近理論を論文にまとめた。パネルデータが時間方向にある程度denseである場合、ランダムな関数の離散観測と考えることができるが、そのようなデータを関数データと呼ぶ。従属変数はスカラー、共変量はランダムな関数で与えられる状況を考え、従属変数の条件付分位点が共変量の線形汎関数で与えられモデルに対して、ある種の自然な推定量を考え、その漸近的な性質(ミニマックスの意味で最適な収束レートの導出)を行った。以上の結果は、既にAnnals of Statistics誌に掲載済みである。
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