低所得者層が居住していた地域が、ある都整備や都市再開発のイベントをきっかけに、当該地域がより快適な居住地に変化すると、その地域により豊かな所得階層の人々が流入し、既に住んでいた低所得の人々を追い出すジェントリフィケーションという現象がある。日本でも都心の地価の低下や再開発などにより、都心回帰の現象が観察される時期があった。そのことがジェントリフィケーションを引き起こしていた可能性がある。このことを、町丁目レベルの世帯平均所得データを用いることにより分析を行っていく。そこで、本年度はまず、都市(東京圏、近畿圏)における空間的な変化をデジタル地図上に取り込み、以下のデジタル地図を多年度にわたって作成した。(1)平均所得の町丁目別分布、(2)住宅の構造別世帯数分布、(3)産業分類表の注分類に基づく産業立地分布、(4)人口、ならびに昼間人口分布である。これらは、表計算ソフトベースになっている調査結果をGIS上で描写可能な形式に変換し空間データ・ベースを構築した。さらに、これらのデータが存在する期間と同じ期間の地価のデータもパネル化し、データベースとして重ねた。 これらのデータベースが構築できることにより、町丁目レベルでのパネルデータを作成できた。市町村レベルでのパネルデータは多く存在するが、このような町丁目レベルでのパネルデータは、なかなか整備がされていないため、これらを作成することが今後の空間的な地域の分析に大きく役立つことになる。
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