研究概要 |
公共インフラ整備や都市整備や再開発のイベントをきっかけに、当該地域がより快適な居住地に変化すると、そこへより豊かな所得階層の人々が流入し、既に住んでいた低所得の人々を追い出すジェントリフィケーションという現象がある。その分析のために、東京都と大阪府について、地価公示、産業別事業所・就業者数、所得階層別人口、再開発事業地点についての町丁目ベースでの空間データを、2時点以上において整備を行った。 それらの中で、『事業所・企業統計調査』の2004年から2006年にかけて変化が顕著であった情報技術産業は、山手線の主要駅、ならびにそれ以西の沿線に沿って大きく事業所数を伸ばしたことがわかった。『商業統計調査』では、小売店での事業所数の変化をみると東京駅周辺、品川駅周辺、銀座、六本木、羽田空港といった地域での、増加地域の集積が目立っていることがわかった。これらは2002年から2007年の間に再開発が行われたり、新しい小売店が出店をしたりした地域であった。 また、ジェントリフィケーションで、それまで居住していた人々が流出する原因として、住環境がよくなることで、賃料や税金などが高くなり、支払いが困難になるといったことが考えられる。そこで、地価バブル崩壊後の1993年から2011年までの地価の下落を比較したところ、「防災再開発促進地区」に指定された地域の下落幅が、そうでない地域に比べて21,187円も小さいことがわかった。すなわち、「防災再開発促進地区」に指定された地域では、再開発等により居住環境が改善された分、地価が上昇し、その他の地域よりも下落が抑えられたと考えられる。 『防災再開発促進地区』として指定を受けた住宅地は、再開発が実施されることにより、人口流入や地価の上昇、所得層の高い住民の流入といった効果を期待することができることがわかった。
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