本研究は、1980年代中頃からアメリカをはじめとして先進国経済の労働市場でみられるパズル、すなわち労働生産性の上昇が回復し、失業率が低下したにもかかわらず、実質賃金の伸びを伴わなかった現象の解明を目的としている。これを分析するためのモデルを前年度までに構築して国際雑誌に投稿していたが、今年度はレフェリーおよびエディターのコメントにしたがい、改定を続けた。その結果、Structural Change and Economic Dynamicsに掲載された。 また、本研究のモデルは所得分配の変化も分析できるように構築されており、シミュレーションによって利潤ショアが高くなる状況を確認した。その成果を厳密に定式化するための第1歩として、非収穫逓増経済における技術選択と所得分配の関係についての研究を着手した。これは必ずしも当初の研究計画に含まれていたわけではないが、本研究で用いられているような多部門モデルでは、収穫一定が仮定されることが多くので、本研究が新奇性を有しているこは明らかである。この成果は2013年5月にロンドンで開催されるEuropean Society for the History of Economic Thoughtの第17回コンファレンスによって報告することが決定している。この研究もブラッシュアップして、国際雑誌に報告する予定である。 また、先に挙げたEuropean Society for the History of Economic Thoughtの第17回コンファレンスでは「Structural dynamics(構造動学)」に関する特別セッションが開かれることになっており報告するよう依頼を受けたので、本研究成果の1部を報告する予定である。
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