研究概要 |
(1)理論モデル([1]Nakabayashi,2009)については,日本経済学会(2010年5月)及び2010年Society for the Advancement of Economic Theory Conferenceでの発表等を通じて得たフィードバックを元にモデルのさらなる拡張及び政策的意味合いの引き出しが可能となった。それをもとにした研究成果をレフェリーつきの海外のジャーナルに投稿し,さまざまなフィードバックを得た。 (2)実験のデザインをとりまとめ,被験者実験で実際に使うコンピューターにインストールするための実験ソフトウェアを作成し,数回の試行を行った。実験では被験者がコンピューターの前に座り,ランダムに割り振られたコスト情報に基づいて下請業者として元請業者に対して入札してもらう。その後,コンピュータが担当する元請業者は理論モデルのとおりにコストを算出したうえで政府に対して入札を行う。他のすべてを一定として元請業者の数を1から2,そして2から3へと増やして行った時,下請業者である被験者の入札価格が低下するか否かを観察した。 実験データはこれまでのところ,下請入札では収入等価定理が成り立たない等,ほぼすべての理論予測を支持している。さらに被験者のリスク許容度など,理論モデルでは扱われていないが,現実の社会では大きな影響を及ぼすと思われる要因が観察された。したがって,実験結果を理論モデルへのフィードバックさせることにより,理論モデルの頑健性を向上させる方向性をつかむことができた。
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