本研究は,建設業や製造業など,政府の財・サービス等の主な調達先である産業において見られる下請重層構造の生産システムが,効率的な政府の入札・契約制度を設計するにあたっていかなる影響があるのか,[1]Nakabayashi(2009)の理論モデルで提示された定理を,1.オークションの構造推定による実証分析および2.被験者実験,の双方より検証した。 本研究のオークションの構造推定による実証分析では,入札者のPrivate Informationが入札者数によって内生的に決まるかどうかを検定した。 本研究における被験者実験分析では,実証データでは観察できない下請企業の行動を観察すし,モデルの整合性を検証した。既存のオークションモデルが考慮していなかった多重構造の生産システムをモデルに組み入れ,その結果として得られる理論的命題を実際のデータ,さらには実験による被験者の行動によって実証した。これにより,経済学におけるオークション理論および契約理論の,特に調達入札に関する分析に幅を広げることが可能となった。同時に,そうした理論モデルをベースに行われるオークションの構造推定を用いた実証研究においても,競争が激しくなるにつれて下がっていく下請契約価格を考慮したうえでの真の意味での入札者(元請企業)のコストを正確に推計する手法を検討した。
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