研究課題/領域番号 |
22730189
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
伊藤 由希子 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (30439757)
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キーワード | 医療費分析 / 医療資源の適正配置 / 生活習慣病予防 / 疾病管理 |
研究概要 |
平成23年度はデータベース作成作業の段階で技術的な問題から中断を余儀なくされた.そのため,研究資金を平成24年度に繰り越した上で,研究活動を行っている.従って研究実績は,平成24年度報告に統合されている.ただし実際には,平成23年度データベース作業の中断中は,主に以下の3点:(1)別の利用可能なデータを利用した調査研究,(2)先行研究の整理,(3)共同研究者との検討会や,新たな共同研究先の開拓,を行った. (1)における代表的な活動として,「提言:日本の医療改革」(日本経済調査協議会・医療改革研究会報告書)における「2章 都市再生ビジョンと一体化した医療資源の適正配置を進めよ」の執筆が挙げられる.これは東日本大震災とそれに伴う既存医療資源の欠損をうけ,医療提供システムの刷新を掲げる提言であり,本研究趣旨にも沿うものである. (2)における主な活動として,「生活習慣病予防事業の医療費に及ぼす効果の検討 健保組合データを用いた検証」が挙げられる.(なお,当研究は厚生労働省科研費(津下一代代表)の分担研究としても位置付けている)医療費データを長期に蓄積することで,どの程度の疫学的な解明が可能となり,医療サービスの経済学的評価に資するかを論じている. (3)における主な活動として,「健保データを用いた医療費分析 Johns Hopkins “Adjusted Clinical Group” Systemを用いた検討」が挙げられる.これは国外(主に米国)で利用されている疾病管理・費用分析のツールが日本での医療情報に適合するかどうかを共同研究で検討する試みである.上記の3点については,調査報告書を執筆し,国内外での研究報告(Johns Hopkins University, 東京医科歯科大学,三重大学,日本医療病院管理学会など)を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は,技術的な問題から作業の中断を余儀なくされたため,「予定した進度の達成」という点では,やや遅れをとった.ただし,平成24年度に研究内容を移行した結果,平成24年度末時点では,ほぼ,当初の予定通りの進捗状況に回復した.
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度末の時点で,分析上最低限必要なデータ収集は完了し,また並行して研究成果の発表も進めている.しかし,以下の課題が挙げられるので,引き続き,改善したい.(1)医療供給において,供給者(主に病院)の質を比較する情報が依然として十分でないこと(2)データ量が膨大であるため,研究体制を人的に拡大する必要があること,の2点である. (1)について,本研究では,消費者サイドにおける情報(年齢・性別・既往歴・おおよその経済的な背景)についての情報を豊富に収集しているのに対し,供給者サイドの情報(症例数・医師数・看護師数・高度医療技術の活用・ガイドラインの遵守等)は依然少ない.この状態では,制度・政策形成への提言における具体性と中立性が充分でないため, 引き続き情報収集に努力したい. (2)については,データ量が膨大となり,個人(研究代表者のみ)では,論文執筆や論文報告等の研究活動と,データの分析・保守管理等の(ルーティーンワークを含む)活動の双方を日常安定的に担うことが難しい.従って具体的には人材育成のための教育的投資が時間的にも資金的にも必要である.ただし,これらはそもそもの本研究資金の趣意を越えるため本研究年度以降の課題としたい.
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