本研究の目的は、環境税が産業全体の生産性に与える影響についてより詳細に分析するために、企業の生産性に関して異質性を導入し、企業の参入退出を考慮した一般均衡モデルを構築することにある。Melitz(2003)を参考に、産業の生産性に分布関数を導入し、企業生産性の異質性を考慮した内生的成長モデルを導入した。各企業には固定費用がかかるとし、連続的な企業の生産性分布のうち利潤ゼロとなる均衡カットオフポイントを導出、それ以下の生産性を持つ企業は退出することになると仮定した。環境税の導入によって、企業の費用負担が大きくなる場合、その費用をまかなえる生産性の高い企業だけが参入後生産を継続できる。一方、生産費用増加のため生産性の低い企業は退出を余儀なくされる。もし、環境税の導入がカットオフポイントを変化させ、生産性の高い企業の参入と低い企業の退出を促し、産業の生産性分布が高い方へシフトすれば、環境税は産業全体の生産性に正の影響を与える可能性がある。企業の生産性に関して異質性を導入し、企業の参入退出を考慮した一般均衡モデルを構築した。平成23年度は、前年度構築した静学モデルを用いて、環境税の導入が企業の参入・退出を通じて産業全体の生産性にどのような影響を与えうるか、定性分析を行った。次に、数理モデルの現実妥当性を検証するため、シミュレーションによる定量的分析を行った。
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