研究概要 |
さまざまな政策課題にとって、政策変数をコミットした方が社会的に望ましい場合と時間整合的な政策変数の決め方が望ましい場合がある。本研究では、政府が排出税を採用しており、数量競争を行う複占企業を想定し、各社とも自社でend-of-pipe型装置(脱硫・脱窒装置など)を開発している規制環境を分析対象としている。この文脈は石油精製メーカーなどの大型プラント所有企業などの寡占産業が当てはまる。尚、これはPoyago-Theotoky(2007)【JEBO】のモデルの中での拡張分析でもある。本年度の分析目標として以下の点を定めた。クールノー型複占市場において、排出税率のコミットメント能力の有無に応じた社会的に望ましい環境R&Dの形態を解明する。また、どのような場合に共同研究開発が容認されるのか、その判断基準を解明する。得られた結果は次の通りである。 【1】企業の汚染削減投資の水準決定を受けてから政府が排出税率を決める場合(時間整合的排出税政策),(環境被害が小さいとき,共同研究開発機関の設置だけでなく汚染削減投資でのカルテルを行うことが社会的に望ましい。(ii)環境被害が大きく,かつ環境研究開発の費用が大きい(十分小さい)ときには,競争的な環境研究開発(共同研究開発機関を設置しての汚染削減のカルテル投資)を行うことが社会的に望ましい。 【2】:政府が排出税のコミットメント能力をもつ場合,リサーチ・コンソーシアムを設置して共同研究開発を行うと同時に,結合利潤を最大にするような投資水準のコーディネーション(カルテル)を認めた方が常に社会的に望ましい。 得られた成果については、今後公刊へ向けての作業を進める。
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