研究概要 |
今年度は,まず,本研究の目的の1つである上下分離方式と上下一体方式のどちらの形態が効率的か,を公的管理方式と民間管理方式の2つのパターンで理論モデルを用いて比較を行った.この研究は昨年度の積み残しとしていたものだが,今年度の研究で,上下分離形式の公的管理型が社会的に望ましくなるためには,国が空港本体からの収入だけでなく,商業収入も重視する必要があることを明らかにした.従って,空港を商業の場と考えていない現状では,空港の管理方式を民間による上下一体型にするべきであることを明らかにした. 次に,国が空港を管理した場合と地方が管理した場合,民間が管理した場合で費用効率性に違いが何故生まれるのかについて,理論モデルを用いた分析を行い,国が管理した場合,空港間の競争の欠如によって費用削減努力を行う動機が生まれないことを明らかにした.但し,その費用削減努力は,社会的にみると過大となる可能性もあることが明らかとなり,費用効率性の改善が社会厚生を改善するとは限らないことも明らかとなった.また,同研究で,国による料金決定は,実際に空港を運営している人たちに,費用削減努力を行わせる動機を生じさせないことも明らかとなった.その場合は,地方や民間に空港を管理させ,各空港に少なくともプラスの利潤が生じるような価格設定を許すことにより,費用削減努力が生じ,それが結果的に社会厚生を改善することがあることも明らかになった. 以上の研究を通し,国が上下分離型で空港を管理・運営する方法には多少なりとも合理性は残るが,現在の日本の空港に対する考え方を加味すると,少なくとも国による管理は好ましくないことが分かった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,昨年度の遅れを取り戻すべく2本の新規の論文作成と前年に作成した論文の修正に取り組んだ.その結果,以上の3本のうち2本は専門雑誌に投稿できる状態になると同時に,残る1本もほぼ完成し,学会報告等を通して完成度を高めるだけとなった.これらの論文作成によって,理論的な面からのアプローチに目途が立ったためである.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,これまで作成してきた論文を専門雑誌に投稿し,また直近に作成した論文は学会報告等を通してさらに完成度を高めていく.それと同時進行で,空港運営の効率性についての実証研究に取り掛かるべく,空港統計の整備,また国土交通省が発表してる国管理空港の試算結果の精査を進めていく.ここで問題になるのは,地方管理空港に関する収支の入手が困難であること,さらには国の計算方法との違いもあるので比較に意味をなさない可能性がある.その場合は,空港統計の利用者状況や飛行機の離発着回数など,公的な統計として発表されているデータを加工し,効率性を図る指標を作ることで,実証研究を完了させる.
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