今年度は,国が空港を管理した場合と,地方が管理した場合で費用効率性に違いが生まれることを,費用削減努力を空港運営主体が行う,という理論モデルを用いて明らかにした.国が空港を運営する場合,空港毎に潜在的な利用者数などが異なるにも関わらず,統一的な空港料金が設定される.また,それぞれの空港が赤字経営に陥った場合も,特別会計等を通して,赤字が補填される.こうした制度によって,各空港運営主体はモラルハザードを起こし,結果,十分な費用削減努力を行わない. 一方,地方が空港を管理する場合,空港の潜在的な利用者数を考慮し,空港料金が設定される.また,国管理型のような大きな赤字補填も期待できない.そこで,空港運営主体は,費用削減努力を行うインセンティブを持つ. 以上の結果,空港運営の費用,という面から見た場合,地方に空港の管理を任せた方がいいことになる.但し,地方に空港管理を任せた場合,空港料金を設定する際他地域への影響を考慮しないため,空港料金が割高になる,という非効率性も生じる. 本研究では,以上のトレードオフが存在することを明らかにし,その上で地方間の潜在的空港利用者の差が小さい時は国が,大きい時は地方が管理することが望ましい事を明らかにした. 尚,統計上からは収支報告書の作成方法の差異等があり,比較が極めて困難であったが,地方管理空港の効率性の方が高いことが読み取れた.
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