研究概要 |
今年度は,使用済み耐久財の処理において,処理の時点で処理料金を徴収するDisposal Fee(DF政策)と耐久財の購入の時点で処理料金を徴収するAdvance Disposal Fee(ADF政策)の比較検討に関する研究を行った。さらに,使用済み耐久財の処理市場を公営処理企業と民営処理企業の存在する混合寡占市場であると仮定し,公営処理企業の民営化がDF政策およびADF政策にどのような影響を与えるのかを明らかにした。主要な結果は以下の通りである。 まず,ADF政策の下では,処理料金の上昇は耐久財の需要量を減少させ耐久財の長期利用者を減少させてしまうことから社会厚生上,マイナスの影響を与える。したがって,公営処理企業が完全公営化された場合,処理料金はゼロとなるが,完全民営化された場合,処理業者は独占利潤を得るために処理料金を引き上げることになることを示した。次に,DF政策の下では,公営処理企業が完全公営化された場合,処理料金を処理費用に一致させることで処理費用を内部化することにより,社会厚生を最大化する(ファースト・ベストを達成する)ことができるが,完全民営化された場合,中古の耐久財価格と処理費用が十分小さいときには,処理料金を引き上げることで独占利潤を高めることができるため,この場合,完全公営化のときより処理料金が大きくなることを示した。最後に,DF政策およびADF政策の下での社会厚生の比較を行うと,完全民営化の場合,DF政策はファースト・ベストを達成しADF政策より望ましい政策と言えるが,完全公営化の場合,中古の耐久財価格が十分小さいときにはADF政策の方がDF政策より望ましい政策になり得ることを示した。この分析結果は,使用済み耐久財に対する処理料金の徴収方法のあり方および公営処理企業の民営化について新しい政策的インプリケーションを与えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度から4月~6月に先行研究のサーベイを行い,7月~9月に論文を作成し,10月~12月に学会や研究会で発表し,1月~3月に論文を修正・投稿するという一連の流れができており,今年度も順調にそのプロセスを進めることができたためである。
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