今年度においては、公共事業の入札において、電子入札の導入が競争に与える効果を分析した。公共工事を受注したい入札者が集まり入札金額を紙に書いて投票するという従来型の入札に対し、インターネット経由で入札額を提出する電子入札は、入札者間のコミュニケーションの機会を減らすため、談合を抑制する効果があると考えられている。電子入札は、近年、入札談合を防止したい国や地方自治体によって積極的に取り入れられている。本研究では、最近電子入札を導入した自治体の公共入札において、電子入札導入前後のデータを収集し、入札行動がどのように変化したかを分析した。分析の結果は以下の通りである。(1)全体の傾向として、電子入札の導入によって入札額が低下した。地域や産業ごとに市場を区切って分析を行っても同様の結果がえられた。これより、電子入札の導入によって競争が促進されたと考えることが出来る。ただし、金額の大きい大規模工事においては、電子入札の導入後にかえって入札額が上昇する傾向が見られた。(2)発注側が入札参加者を指名する指名競争入札においては、指名された入札者が入札参加を辞退することが許されているが、多くの市場で電子入札の導入後、入札者が入札参加を辞退する頻度が上昇するという傾向が観察された。
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