平成24年度は、論文タイトル"Bid roundness under collusion in Japanese procurement auctions"の改訂に時間の大部分を割いた。改訂で得られた研究成果について述べる。 本論文は、公共工事の入札において入札談合が摘発された市場のデータをもちい、入札談合が行われていると入札データにどのようなパターンが生じるかを分析したものである。入札談合では通常、談合組織のメンバーのうち入札に参加する予定の者が、事前に集まったり秘密裏に連絡を取り合ったりして、誰が落札するか、落札額はいくらにするかを決め、本番の入札では予定した通りの落札結果になるよう、落札予定者以外は許容範囲の上限に近い金額を入札する。落札予定者は、自分の入札額を他の入札者に知らせる必要がある。本研究では、落札予定者は談合におけるコミュニケーションのミスを防ぐ目的で、切りの良い数字を予定落札額として選ぶのではないか、また、落札予定者以外の談合メンバーも、任意の大きい数字を選ぶ際には、複雑な数字を避け、切りの良い数字を好むのではないかと仮説化し、検証した。 本研究では、沖縄県の談合事件に関連したデータを用いた。本研究は、談合が活発に行われていた時期、公正取引委員会による摘発の後の時期、さらに摘発の翌年行われた入札制度改正および独占禁止法の強化改正以降の時期、という3つの連続する期間について入札額の特徴を分析した。 談合摘発の前後のデータを比較したところ、摘発前では、切りの良い数字が入札額として選ばれやすい傾向が見つかった。さらに、最も低い入札額は、他の入札額よりもさらに切りの良い数字になりやすい。本研究は様々な統計分析を行うことによって、このような傾向は談合と関連が深いことが確かめられた。
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