27年度は公共入札のデータを用い、入札に参加する企業間の対称性と入札の競争度の関係について分析を行った。 寡占理論では、市場のメンバー間の対称性が高いほどカルテルが容易であることが指摘されている。しかし地方自治体の公共入札では、自治体側が入札者を指名する指名競争入札制度が用いられており、その際、立地、規模などの面で類似性の高い入札者が集められることが少なくない。本研究では入札に参加した企業の対称性とその入札の競争度の関係を分析し、類似性の高い入札者が集められることで競争が阻害されている可能性を検証する。 本研究では、ある入札にともに参加した2企業のペアを1個のobservationとし、そのペアの間に暗黙の協調があったか否かということと、そのペアの間の類似性の関係を分析した。本研究では、ある入札が、落札額が予定価格に近い高落札入札だった場合、その入札に参加していた入札者のペアには暗黙の協調関係があったと見なした。また、類似性の指標として、規模、経営状況、立地の近さ、経営者の名字の一致などを用い、それらの指標が協調関係の有無と相関しているかを回帰分析した。 分析結果、あるペアの間に暗黙の協調関係があることは、(1)そのペアの立地が近いことと正の相関があり、(2)そのペアの年間売上高の差と負の相関があることが明らかになった。立地と売上規模の点で企業の類似性が高いと、それらの企業の間には協調関係が生じやすい可能性があることを指摘した。
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