本研究は、非対称オークション理論に基づき、日本で最近始まった行政機関や自治体による電力購入入札を考察する。電力小売りの部分自由化以降、電力の一般競争入札は全国の行政関係機関や自治体で導入が進められ8年が経とうとしている。本研究ではこの電力一般競争入札の応札額データを用い、自由化により参入した新規企業と既存電力会社との応札行動の違いとその程度を明らかにする。即ち、新規参入企業と既存電力会社の電力供給費用の違いを考慮に入れた非対称オークションモデルを構造推計し、両タイプの企業の応札戦略を把握する。また、上記の推計で得られる推計値を用いることで様々な仮想の制度のもとでの期待収入や効率性を求めることができる。これにより、理論で導かれる最適オークションやPrice-preferene制度によってどの程度現状を改善することができるかを明らかにすることができる。 電力小売りの部分自由化は2000年にスタートし、当初は特別高圧契約の需要家が対象であったが、自由化範囲は徐々に拡大し、2005年4月には契約電力50kW以上の高圧需要家すべてが自由化対象となった。2005年度用の電力入札から昨年度まで4年間の入札件数は合計で2550件以上になる。これらの入札案件の電力会社らの入札価格を用い、非対称オークション理論のモデルを構造推計し、推計値を用いて制度分析を行う。 平成22年度は主にデータ作成に力をいれた。入札実施機関と落札価格については電気新聞が発行している入札情報について識別することができる。しかし、分析には落札に至らなかった入札価格も必要なため、それらの情報を行政機関や地方公共団体の情報公開制度にのっとって案件毎に開示請求を提出し入手、入力している。
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