本研究は、非対称オークション理論に基づき日本で行われている行政機関や自治体による電力購入入札を考察るすものである。本研究では電力一般競争入札の応札額データを用い、自由化により参入した新規企業と既存電力会社との応札行動の違いとその程度を明らかにすることを目的としている。すなわち、新規参入企業と既存電力会社の電力供給費用の違いを考慮に入れた非対称オークションモデルを構造推計し、両タイプの企業の応札戦略を把握する。 近年、電力業界は大きな構造転換期を迎えており、新規参入企業の役割も大きくなり、その需要も増加しつつあったところ、震災により東京電力の原発が発電不可能となったこともあわせ、需要に見合った電源が確保できないという問題が顕著になっていった。そこで、本年度は、新規参入企業の電源に制約がある可能性に注目し、モデルにCapacity Constraintを導入することを試みた。このような制約が企業の応札戦略に動学的にどのような影響を与えているかを分析することがこのモデル拡張の目的であったが、統計的に有意な制約の影響は得られなかった。これは、動学的推計を可能にするために、モデルに強い仮定を置いていたことと、データが古いことに問題があると考えられる。今後は正確に電源の制約の影響を推計するためにも、これらの問題を解決していきたい。
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