研究概要 |
本年度は、研究初・次年度に作成した2本の論文の改訂作業を行い、結果として両論文を以下の国際査読雑誌へ掲載(または掲載予定)させることができた。 研究 "Environmental Innovation and Policy Harmonization in International Oligopoly"(Environment and Development Economics, 18, 162-183, 2013)では、標準的な2国2企業の戦略的貿易(環境)政策のモデルを用いて,国家間の環境政策の協調の有無が、国際市場で競争する企業の環境技術開発のインセンティブに及ぼす影響の定性的分析・比較を行った。結果として「政策水準・手段の協調」は、両国家に短期的な利益をもたらすが、長期的な環境イノベーションの妨げになる場合と促進させる場合があり、それらを分ける定性的な条件を明らかにした。 また、研究 "Endogenous Timing in Strategic Environmental Policymaking"(Environmental and Resource Economics, forthcoming.(北村啓浩氏との共著論文 )では、タイミングゲームという枠組みを用いて、戦略的環境政策における内生的なリーダーシップの問題を分析した。結果として、越境汚染の程度が比較的弱い場合には、環境政策決定のタイミングとして同時手番がサポートされ、強い場合には交互手番がサポートされること、さらに、環境被害の程度が弱い国がリーダーとなる均衡が、リスク支配的であることを明らかにした。 これらの成果は、貿易量の増加や越境汚染を通じた国際的な相互依存関係が強まる現在において、国際間で政策をどのようにコーディネートするべきかという問題に対して、重要な政策的含意を持つと考えられる。
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