近年、海岸部における漂着ごみの急増が大きな社会問題となっている。このような中、国内においても海岸漂着ごみに関しては、いわゆる「海岸漂着物処理推進法」が制定されるなど、徐々に対策が講じられつつある。しかし、わが国の海岸漂着ごみの多くを占める河川を通じて流出した陸域由来のごみについては、認知がまだ不十分なこともあり抜本的な対策が講じられておらず、依然として内陸部での発生抑制が大きな課題である。 本研究事業では、GPS機能付きのカメラ付き携帯電話を用いたわが国で初めてとなるオンライン・ごみマップ・システムの開発を進めてきた。このシステムは、河川における漂着ごみの状況を定量的かつ容易に把握できるものであり、現在、WEBでその成果を公開中である。 本研究事業では、漂着ごみを定量的に評価する指標として、2005年に山形県・最上川で開発された「水辺の散乱ごみの評価手法」をもとに、より河川の実態に即した評価が容易になるように改良を重ねた。その結果、漂着ごみの多くは住宅地など人口の多い支流域から大量に流入している実態が明らかになった。また、大量のごみが散乱している支流においても、ほとんどすべての地点で、ごみの賦存量は極めて低いレベルにあり、河川における漂着ごみはこれまでいわれてきたような不法投棄などではなく、いわゆる散乱ごみが大きなインパクトを与えていることがわかった。 また、単に河川の漂着ごみのデータベース化を図るだけではなく、出来上がったごみマップにコメントなどを書きこめるようにすることで、定性的な河川の環境の評価が可能なものとなるようにした。 こうしたシステムを、実際に地域において試用することで、地域住民の河川に対する意識や取り組みは大きく変化し、実証実験を行った地域ではその後、定期的な河川清掃活動が行われるようになるなどした。
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