最終年度となる平成24年度は、イタリアでの調査および資料収集、さらには最終成果となる論文の執筆に取り組んだ。調査及び資料収集においては、日本(鯖江)とイタリア(ベッルーノ)、中国(東カン)におけるグローバル市場を巡る競争関係、さらには3地域間における協力関係として、集積間での分業構造及び技術協力関係、資本関係さらには中心となる企業の主要統計、社史等について資料収集を進めた。 これら資料を利用し、グローバル経済下における集積間の競争と協力関係のあり方が、グローバル経済にさらされた地場産業集積の盛衰にどのような影響を与え、また地場産業企業自身がどのような役割を担っているのかについて分析を進めてきた。 鯖江産地は一方では中国の地域を自らのネットワークに巻き込み、低コストでの量産体制を整える一方で、同市場は香港系企業からの挑戦に合い、一方高価格帯においてはブランドの使用のため、イタリアの大手企業の戦略に包摂されつつある現状を明らかにした。産地企業はブランド獲得のために、これまで産地の発展を支えてきた金属の加工技術をイタリア企業に明け渡さなければならない状況に追い込まれている。このように本研究では、鯖江産地はグローバル競争のもとで、上からも下からも挑戦を受け極めて厳しい状況に置かれていることを明らかにした。
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