研究概要 |
2010年10月1日にたばこの大幅な値上げが行われたため、喫煙習慣、禁煙意思の変化と時間・リスク選好の変化を調査した。 禁煙意思に関しては、Goto,Nishimura and Ida(2007)に基づいて、たばこ価格などの喫煙意思に変化を与えることを予想される要素に関するコンジョイント分析を行った。その結果、値上げ前の2006年に行った調査に比べると、高ニコチン依存度の喫煙者に関しては禁煙意思を持つ確率が減少し、低・中ニコチン依存度の喫煙者に関してはその確率が上昇した。 さらに、値上げ後に658人の禁煙を開始した喫煙者に対して、禁煙の方法や時間・リスク選好パラメータの測定などを行った。外的動機の変化については、禁煙による金銭負担の変化などの指標を用いた。内的動機については、健康分野の行動変容においても使用されている、Intrillsic Motivation Inventory(IMI)を用いた。第1回目の調査から2・4・6ヶ月後に、禁煙継続の有無、時間割引率と相対危険回避度の変化、内的動機に関する変数の変化を測定した。 658人のうち、6ヶ月後まで調査を終了したものは529人であった(脱落率20.6%)。調査開始時から6ヶ月後の調査終了時まで禁煙が続いていたものは430人(81.3%)であった。禁煙失敗群の方が、有意にIMIの値が低く、禁煙失敗群の方が禁煙に関する内的動機が低いことがわかった。時間選好率に関しては、禁煙成功群は6ヶ月間変化がないが、禁煙失敗群は、6ヶ月後に年9.0%から21.3%へと上昇した。 この結果からは、禁煙の成功・失敗によって、禁煙に対する内的動機の変化と時間選好率の変化が引き起こされることがわかった。
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