研究概要 |
本研究課題では,産業クラスターの形成に関して,集積の経済の視点から,産業クラスター,輸送インフラ(輸送費),物流の3者の因果関係を実証的に明らかにしていくことを目的にしている。韓国をはじめとする北東アジア地域の物流ネットワークの進化,さらには,東日本大震災で表面化したサプライチェーンのボトルネックを念頭に,それらが西日本地域(阪神地域,瀬戸内海地域,北部九州地域)における産業クラスターの形成と輸送システムの構築にどのような影響を与えているのかを明らかにすることが,具体的な研究課題でとなる。このことを現地調査やアンケート調査によって明らかにするとともに,その実態を踏まえて,理論的な考察を行い,計量経済分析に繋げていくことを志向している。 平成23年度は,平成22年度の1)内外の先行研究の整理,2)国内の港湾・空港に関して,センサスデータに基づきデータベースの作成,3)四国や九州の港湾・航空事業に関係のある企業や行政に聞き取り調査,の実施に加えて,(1)韓国の仁川港,釜山新港,光陽港の調査を行い,ポートオーソリティに聞き取り調査を行うとともに統計データを収集した。また,(2)昨年度の調査で課題になった点を調査した。具体的には,西日本地域の地方自治体を訪問し,製造業以外の産業(例えば,観光関連産業)が,物流振興に繋がっているかどうかを調査した。さらに,(3)東日本大震災で表面化したサプライチェーンのボトルネックに関して,先行研究の精査を行うとともに現地調査を行った。 これらの(1)~(3)の調査に関しては,随時,報告書を作成しており,平成23年度は,これらの報告書を論文にまとめていくことになる。論文のまとめ方としては,聞き取り調査に基づく記述を中心とした成果と統計データの計量経済分析に基づく解析的な成果にしていく方針であり,引き続き包括的に調査と研究を続けていく。
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今後の研究の推進方策 |
今後の本研究課題の推進方策は,第1に,これまでに実施してきた西日本地域(瀬戸内海地域から北部九州地域)と韓国(釜山,光陽,仁川)の行政機関、港湾,企業に対して実施した聞き取り調査を論文にまとめていく。第2に,これに基づき,製造業が集積している生産拠点と物流拠点の地理的関係,さらには,産業振興と物流振興を観光の視点とからめて考察を深めで,空間経済学の枠組みにおける産業集積の形成メカニズムにサプライチェーンの広範な展開の実態を取り込むことで,現実を踏まえた実証分析を行っていく。作成した論文は,順次,関連の学会(応用地域学会,国際開発学会,日本交通学会,North American Regional Science Councilなど)や研究会で報告し,コメントを踏まえて研究成果をまとめていきたい。
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