本研究課題では,産業クラスターの形成に関して,集積の経済の視点から,産業クラスター,輸送インフラ(輸送費),物流の3者の因果関係を実証的に明らかにしていくことを目的にしている。韓国をはじめとする北東アジア地域の物流ネットワークの進化,さらには,東日本大震災で表面化したサプライチェーンのボトルネックを念頭に,それらが西日本地域(阪神地域,瀬戸内海地域,北部九州地域)における産業クラスターの形成と輸送システムの構築にどのような影響を与えているのかを明らかにすることが,具体的な研究課題でとなる。このことを現地調査やアンケート調査によって明らかにするとともに,その実態を踏まえて,理論的な考察を行い,計量経済分析に繋げていくことを志向している。 平成24年度は,過去2年度に引き続き 1)内外の先行研究の整理,2)国内の港湾・空港に関するデータベースの作成,3)韓国(仁川港,釜山新港,光陽港)や四国・九州の港湾の調査,4)中四国・九州において物流に加えて人流(観光)に関する動向の調査 をそれぞれ行った。これらの調査に基づき,2本の論文を作成し,もう1本を執筆中である。そして,観光に関する報告書1本を作成した。2本の論文の内1本は,11月18日に,応用地域学会 第26回 研究発表大会〔青森公立大学〕で「中四国・九州における自動車産業の立地展開と輸送の関係」という論題で報告し,もう1本は『香川大学経済論叢』に掲載した。これらの研究から得られた知見は,日韓の港湾政策の方針の違いのもと,日本の製造業の物流は,金属機械工業品と化学工業品では,発地側の産業集積の規模の方が着地側の産業集積の規模よりも国内物流の増加に与える影響が強いことなどが示唆された。 なお,11月以降は,学会報告した論文と執筆中の論文に関して,追加的な計量分析を行いながら,原稿の加筆・修正を続けている。
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