研究課題/領域番号 |
22730220
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研究機関 | 独立行政法人森林総合研究所 |
研究代表者 |
嶋瀬 拓也 独立行政法人森林総合研究所, 北海道支所, 主任研究員 (80353720)
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キーワード | 産業組織 / 立地 / 製材業 / 住宅建築業 / 企業規模 / 集成材 / ムク材 / ニッチ |
研究概要 |
各種統計資料を用いて、製材業の産業組織に生じた構造変化について検討した。わが国では、製材生産が、原木樹種や生産品目ごとに特定の1~3地域に集中し、新たな製材産地が形成されつつある。これらの産地は、一般に、少数の大型製材工場から成り立っている。これらのことは、わが国の製材品市場が収縮していくなかで、品目ごとに、高い競争力を有する製材業者のみが生き残っている状況を示していると思われた。このような製材産地再編の動きは、外材製材だけでなく、国産材製材にもみられ、国産材需要の地理的な偏在化を通じて、林業生産の地域格差を拡大させる要因となっている。 アンケート調査の結果を用いて、住宅建築業者の材料選択とその背景について検討した。建築業者の規模別に、木造在来工法の主要構造材の一つである管柱(くだばしら)の採用状況をみると、大規模な層ほど集成材の比率が高く、小規模な層ほどムク材の比率が高かった。しかし、中規模層に位置づけられる年間建築戸数20~49戸の層を中心に、集成材への転換が急速に進んでおり、より小規模な階層にも集成材が浸透しつつある。反面、この層を中心に、ムク材へと(再)転換する動きもみられる。 このように、大規模製材業者が供給力を高めるとともに、中小製材業者が主要な得意先としてきた中小住宅建築業者においても集成材の浸透が進んでおり、中小製材業者の存立基盤は、需給両面から崩れつつある。しかし、その一方で、差別化・高付加価値化を目的としてムク材へと再転換する動きもみられ、中小製材工場の存立基盤として、重要なニッチになりうる可能性がもつと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
震災等のため、現地調査を中心とする当初の研究計画については修正を要したものの、統計資料の分析や収集済みデータの再検討によって研究を行い、おおむね当初の研究計画を達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となるため、これまでの研究の結果を踏まえながら適宜補足を行い、成果の取りまとめと公表に努めたい。当初計画より縮小せざるを得なかった現地調査についても、できる限り実施し、よりよい成果を得たい。国内製材業の産業組織に関する論考の執筆依頼(12月〆切)があったので、ここに主要成果が盛り込めるよう、取り組むつもりである。
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