研究概要 |
本年度は,制度と経済成長,および近年の政治経済学に関する理論的・実証的文献について収集した。特に基本的な経済成長に関する文献はすでに収集しているので,近年盛んになりつつある「制度と経済成長」に関する文献を収集した。また他に九州大学で行われた経済成長論研究会にも2回出席し,経済成長と構造変化,もしくは制度と経済成長に関する最近の研究動向について議論を行った。特にこの研究会では,最近出版されたDaron AcemogluのIntroduction to Modern Economic Growthを足掛かりに議論を行われたため,近年の研究動向を知る上では極めて有意義であった。さらに実施計画の通り,九州産業大学の金崎講師と最近の公共経済学,政治分析の動向についても議論した。特に金崎講師には最近の政治経済学におけるいくつかの重要な研究動向についてレクチャーを受けることができた。上記のような情報収集と同時に,本年度は過去に執筆した論文を改定し,消費者の通時的経済厚生を最大にすることを目的とした政府による最適な知的財産保護の決定問題についてモデル分析を行った。またこのモデルを拡張し,研究開発を行う2国が貿易を行う状況で2国の知的財産保護水準がともに(自国の経済厚生を最大化する保護水準と比較して)過小になることを示した。この結果は平成23年度に共同執筆した図書の形で出版される予定である。また日本応用経済学会などの国内学会に出席し,環境と政治経済学に関する研究発表について討論者を務めるなどの活動も行った。22年度はまだ十分な成果が出たとは言い難いが,次年度に向けて研究上の足掛かりができたといえるので,今後はより一層の成果を求めて研究を行う。
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