財政政策の維持可能性の動学的一般均衡分析について研究を継続した。その成果は、ようやく2編の論文として、国際的な学術雑誌に掲載されることが決まった。 1."A Noteon Public-Debt Sustainability in an Economy with Declining Fertility" 2."International Linkage of Inflation Rates in a Dynamic General Equilibrium"の2編である。掲載雑誌は、前者はFinanzArchiv後者はJournal on Economicsである。 政府の初期負債について、それがあまりにも莫大だと返済不可能であろうが、たいしたことがなければ返済可能であろう。論文1では、政府の初期負債が財政政策の維持可能性と両立する上限の値を導出している。特に、その上限が人口成長率や人口規模にどのように依存して決まるかに注目している。「人口成長率が1%減少したときに、税率をどの程度上げなければ財政政策の維持可能性を保てないか」など、実践的な問題に理論的な解答を与えている。(ただし、もちろん単純化された設定の下で成り立つことである。) 論文2は、他国の金融政策が自国の財政事情に悪影響を与え、その結果、自国の中央銀行が、その財政事情を改善させるためにインフレーションやデフレーションを発生させるインセンティブを持ってしまう可能性を理論的に示したものである。どのような場合にインフレが伝染するか、デフレに感染しやすいのはどのような場合かについても、パラメーターについて丁寧に場合分けをして分析している。このようなチャネルを通じてインフレ率が国際的に連動する可能性を指摘した論文は筆者の知る限り存在しないので、それなりに意義があるものと思っている。
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