家計に対する補助金政策がマクロの消費を喚起する効果を持つかを検証することが、本研究課題の目的である。そのために、予期された所得変動が消費に影響を与えるかを分析し、日本における消費のライフサイクル仮説の成立をテストする。 本年度は、2009年に実施された定額給付金の支給および児童手当を分析対象とし、家計が予期された所得変動に対して、どのような消費行動をとっているかを分析した。分析には、総務省統計局が公表している「家計調査」および内閣府が実施した「定額給付金に関連した消費等に関する調査」を使用する。 統計法第33条に基づく目的外利用申請等を通じて、ミクロデータを入手し、分析のために必要な加工をした。特に、家計調査の市町村コード等を整理し、パネル化のための世帯識別コードを作成した。また、「定額給付金に関連した消費等に関する調査」の消費の内訳について、調査票そのものに立ち戻り、品目分類コードを付した。 定額給付金については、全国民が支給の対象であり、支給金額も年齢によって一律であり、「家計調査」で定額給付金の受取りが明示的に調査されており、理想的な自然実験の状況であると予想されていた。しかし、実際には、調査対象世帯のうち約半数の世帯しか受取を記録しておらず、データの解釈には一定の留保が必要であることが明らかになった。今後は、この過少申告にどのように対応するかを検討する必要がある。 一方、児童手当については、過去の制度の沿革を根拠となる法律に基づき調査した。 来年度以降、消費に与える影響を分析する予定である。
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