2013年度は、家計に対する補助金政策を評価する統計的な基礎付けについて、あらためて考察を行った。これまでの研究では、総務省統計局が調査・公表している「家計調査」を実証分析のデータ元としてきた。しかし、家計調査にはいくつかのクセがあることが知られている。その統計のクセが実証分析に与える影響が分析対象となった。 具体的には、家計調査はいくつかの項目について過少推計になっていると考えられるが、家計に対する補助金についてもその問題が発生していると考えられる。しかも過少となる原因は、不正確な記入よりも、未記入・不申告の可能性が高い。たとえば、2009年に実施された定額給付金について言えば、マクロ統計では90%以上の世帯が受給したことになっているが、家計調査で調査対象期間の6ヶ月の間に定額給付金を受け取ったと報告した世帯の割合は9割を大幅に下回った。また、児童手当についても、受給資格のある世帯のうち児童手当の受け取りを記録している世帯の割合は、マクロ統計の示唆する水準よりも大幅に低かった。 補助金の額が過少になる(言い換えれば、申告された補助金額に誤差が含まれる)場合の標準的な対応方法は、「操作変数法」で分析することである。それに対し、2013年度の研究では、過少申告の原因が未記入の場合に操作変数法を適用することの妥当性を評価した。理論的に、未記入が存在するときに操作変数法を用いると、政策のインパクトが過大に推計されることを示した。さらに実証的にも、子ども手当のケースについて、家族構成から制度上計算される子ども手当の額を計算して未記入が発生していることを示し、子ども手当が消費に与える影響が最大2倍に計測される可能性があることを示した。
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